日本と外国のベビーシッターの違い - 歴史・文化背景編

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日本と外国のベビーシッターの違い - 歴史・文化背景編

日本と外国のベビーシッターの違い - 歴史・文化背景編

2019-07-03

日本でも共働き家庭の増加を背景に、ベビーシッターへのニーズが年々高まっています。しかし、それを満たすに十分なほどのなり手は不足しており、また気軽に利用できる家庭もまだまだ少数派のようです。ベビーシッターは外国においては昔から当たり前の存在なのに、どうしてなのでしょうか? 

その理由を日本の歴史や文化的背景からひもときながら、日本と外国のベビーシッターの違いについて考えてみました。

日本のベビーシッターのなりたち

【母乳のニーズが高い時代、セレブ御用達のベビーシッター「乳母」誕生】

欧米では16,17世紀頃にイギリスの上流階級が子どもの世話係として雇ったナニーが最初ですが、日本での起源をひもとくと、古くは平安時代〜近世にさかのぼります。

良質な粉ミルクが存在しなかった時代、母乳の出の良し悪しは赤ちゃんの命に関わるため、皇族、王族、貴族、武家、または裕福な家では、母親に代わって乳を与える「乳人(めのと / 乳母)」を雇いました。これが日本でのベビーシッターの始まりではないかと言われています。

乳母は乳離れ後も養育担当者として住み込みで働き、お世話はもちろん、しつけや教育も含めて子どもに絶大な影響力を与えていたそうです。江戸時代には将軍家や諸大名をはじめとして、民間でもこの慣習が広まっています。

この皇族で長く受け継がれた「乳人(めのと)制度」が、自らのお手元で子育てをされた上皇后・美智子様によって廃止されたことは有名な話ですね。

【兄弟姉妹や祖父母がベビーシッターだった庶民階級】

しかしながら、同じく平安時代以降の貧しい民衆の暮らしは過酷なもので、母乳が出なければ赤ちゃんを捨てたり、息の根を止めることさえもありました。

赤ちゃんはこの危険な時期をなんとか生き延びると、働く両親兄姉らに代わり、隣近所の助けを得ながらまだ働くことができない幼い弟妹や祖父母らに育てられていたのです。

【日本家庭の核家族化と共にベビーシッター事業者が登場】

その後、1960年代の高度成長期に入った日本で初めて「サラリーマン」と「専業主婦」が登場。これによって都市部を中心に核家族化が進んでいきます。「3歳児神話」が現れたのも同時期です。

その一方で、少数派ながら存在する核家族化後の共働き家庭と富裕層による需要のため、1960年代に家政婦紹介所が家事の一環として保育を開始。1970年代に初めてベビーシッターを紹介する専門の事業者が設立され、1980年代にベビーシッター事業者が増加しています。

そして2019年の現在までにたくさんのマッチングサイトが誕生し、フリーランスのベビーシッターが活躍する時代を迎えたのです。

【日本人の理想のベビーシッターは身内?】

この歴史の流れは現代にも影響しており、緊急に子どもを預ける必要が生じた場合、日本では保育施設やベビーシッターに問い合わせるより、まず最初に両親および祖父母間で可能な限り調整を試みるのが一般的なようです。

経済的なことはもとより、身内以外の他人を自宅にあげて子どもの世話をしてもらうこと自体に、不安や抵抗を感じる人が多いのかもしれません。

また、ベビーシッターを頼む場合でも、信頼を担保する資格やスキルの証明を重要視する保護者が多いことも特徴のひとつ。そのため、なり手のハードルも昔より高くなりつつあります。

外国のベビーシッター事情

【アメリカ:お留守番させると罰金! 子どもを厳しい条例で守る国だからベビーシッターが普及】

ところ変わって、ベビーシッター先進国のアメリカはどうでしょうか? アメリカでは未就学児を育てる母親の就業率が高く、共働き家庭がほとんどです。

そのため、50年以上の長きに渡って、ベビーシッター文化が根付いてきました。

さらに、州によって異なりますが、アメリカでは連邦法によって13歳以下の子供の一人行動(留守番、外出などすべて)が禁止されており、いかなるときも保護者が付いていなければいけません。このことから、登下校や習い事の送迎、放課後のアフターケアなどをベビーシッターに頼む家庭が数多くあります。

日本と違って両親がプライベートや夫婦の時間を大切にするといった理由もありますが、この条例の存在が後押しする形で、ベビーシッターがなくてはならないものに変わっていったようです。

【高校生の人気アルバイト! ベビーシッターが家族の一員になるアメリカ】

また、アメリカのベビーシッターは、日本同様子育てが終わった主婦からプロのナニーまでと様々ですが、特徴的なのは、高校生によるアルバイトが多いこと。映画やドラマの中でもよく見る風景ですね。

これは単に時間があるからというだけではなく、アメリカの高校では労働が「体験」として認められており、ベビーシッター経験が学校の成績として評価されることがあるから。ボランティア活動やアルバイトによって、いかに地域社会に貢献できたかという実績が、大学進学の重要な鍵になるのです。

そのため、アメリカの学生の間でベビーシッターはカフェ店員などよりも人気の高いアルバイトで、地域主催による講習会があるほど。

このように、アメリカでは学生にも任せられるように、スキルよりも人柄とフレンドリーさでベビーシッターを選ぶ家庭が少なくありません。バイト中に家族同様の親しい間柄となり、20年以上経つ今でもクリスマスカードを送り合う仲のファミリーとシッターも存在します。

互いに悩みを相談し合う仲になることも稀ではなく、そうなるともはや仕事を超えた友人としての付き合いです。

子どもと一緒に育ち合う経験をしたことがある学生さんなら、将来良いパパとママにもなれそうですし、日本でも参考にしたいですね。

【フランス:ワーキングマザーを支えるベビーシッター「ヌヌ」さんの存在が大きすぎる!】

夫婦共働きが当たり前でも、2006年以降、出生率2.00前後で推移してきたフランス。晩産化の影響により、2017年度から出生率が3年連続で低下中とはいえ、日本の1.43に対してまだ1.88もあります。

育児と就労の「両立支援」の政策が進められてきた成果ですが、そんなフランスでも保育園は狭き門であり、なかなか入ることはできません。

そこで活躍するのが、保育ママやフランスのベビーシッターであるAssistante Meternelleこと「nounou(ヌヌ)」。

フランスでは、保育園に通う子よりもヌヌさんに預けられる子の方が多いとも言われています。フランスの育児と女性の高い就労率を支えているのは、実はこのヌヌさんと呼ばれるベビーシッターたちなんです。

政府公認のヌヌさんは、60時間の職業研修を受け、市による規定項目(ルール)をクリアしています。登録後も、市の職員による厳しい抜き打ちチェックが続き、規定に反したヌヌさんは解雇されるというお墨付きがあるので安心できるとか。昼間の公園は、ヌヌさんと預けられた子どものペアでいっぱいです。

フランスではヌヌさん無くしては子育てができないと言っても過言ではないのではないでしょうか。

【子育てを卒業したシニアは残りの人生を楽しむために大忙し】

このように、子どもの預け先が無いとき、日本であれば祖父母などに頼るところですが、フランスではヌヌさんのような第三者に必死であたります。

というのも、フランス人は子どもを理由に親を頼ることを、とても失礼なことだと考えているからです。

フランスのシニアはわが子が独立したとき、親離れを寂しがるどころか、再び手に入れた自由に大喜び。仕事を引退していても、毎日予定を詰め込んでアクティブに過ごす忙しいシニアが多いのです。子どもたちも、1度子育てを終えた両親を、孫のために働かせたくないと思っています。

それがフランス流の親子関係であり、お互いの精神的な自立が羨ましくも感じられますね。

もっと気軽にベビーシッターを頼める国になろう

いかがでしたでしょうか。同じベビーシッターでも、日本とアメリカとフランスではずいぶん違いがありましたね。

古来の日本では階級に関係なく、生みの母以外の人間が子どもの世話をすることが当たり前であり、ベビーシッターの起源はセレブを顧客とする専門職、庶民は身内がメインで子守を担っていました。

そのせいか、現代の日本人も、身内だけの閉じられた関係の中で子育てをしようとしがちです。そしていざ他人を家に入れるとなると、信頼を担保するために高度なスキルを求めます。

対して、アメリカやフランスは、最初から身内をあてにはしていません。

子育ては第三者に頼ることの方が当たり前であり、家庭をオープンにすることで、子どもの社会性やコミュニケーション能力が育まれるとも考えています。シッターに求めるスキルなども多くは最低限で、その付き合い方もお互いに対等であり、フランクです。

しかし、今の日本は少子高齢化社会のため、シニアになっても長く働かざるを得ない時代に突入しています。また晩産化の影響もあり、育児と介護が同時になってしまう家庭も少なくないでしょう。もはや子育てを祖父母に頼るのは、現実的な選択とは言えないはず。

フランスやアメリカに習い、まるで身内を呼ぶようにベビーシッターを気軽に頼める国になることができれば、日本での子育てもずいぶん楽になるのではないでしょうか。

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